ヘルニアとは?
体の内部から臓器などが出てしまう状態を「ヘルニア」と呼びます。
頭蓋より小脳が出てしまう「小脳ヘルニア」、背骨の骨と骨の間のクッションである椎間板の物質が、脊髄を圧迫する「椎間板ヘルニア」、臍部、鼠経部から出ていればそれぞれ「臍ヘルニア」「鼠経ヘルニア」と呼ばれます。
会陰ヘルニアとは、肛門の脇の会陰部から体の一部が出てしまうことを言います。
会陰ヘルニアになる原因は?
未去勢雄の肛門の右側に起こりやすいと言われています。
会陰部の筋肉が薄くなることで穴が開いてしまい、脂肪組織や膀胱、前立腺、結腸などが皮膚の下に出てきて会陰部が大きく膨らみます。
見た目の問題だけでなく、排尿障害・排便障害を起こし著しく生活の質を落としてしまいます。
会陰ヘルニアが生じるのは犬でのお話で、猫では見たことがありません。
治療は?
根本治療は開いた筋肉の穴を外科的に塞ぐことですが、塞ぐべき筋肉は薄く萎縮していますので見ても分かりづらいことがほとんどです。
会陰は外肛門括約筋、肛門拳筋、尾骨筋、浅殿筋という4つの筋肉で構成されていますが、肛門挙筋と尾骨筋はもうその役目を担っていないことがほとんどです。
よく行われているであろうものは
・外肛門括約筋と浅殿筋(内側にある仙結節靭帯と共に)を、下方部の萎縮した筋肉の代替えとして骨盤に付着している内閉鎖筋を結紮する方法
・人工的な素材で穴を塞ぐ方法
です。開口した穴を塞ぐことによって腹腔内容物の露出、直腸の変異を防ぎます。
腫瘍があるなど特異な状態になければよりよい体調へ戻すことが可能でしょう。
当院では人工物を使わず残存ずる筋肉を縫合して閉鎖する手法を取っています。
会陰ヘルニアにならないためには
雄は去勢すること、肥満や下痢といったおなかに力が入り続けるような状態にさせないことが重要です。
正しい食事管理も大切な予防になるのではないでしょうか。